深夜のファミレス

日々、脳細胞がパンパンと音を立てて死んで行く今日この頃、セリフを覚えると言う作業がかなりしんどいわけです。もうね・・・泣きそうになる時もあります。

で、私の場合どこで覚えるかと言うと、電車の中です。相模原などと言うちょっと田舎に住んでいるので通勤時間の有効活用です。錦糸町の稽古場なんざ片道2時間くらいかかりますからね・・・ほんとに。
「よく通えるね?」
とか聞かれますが、あの通勤時間は大事なわけです。

しかし、今こうしてる間にも多分どんどん脳細胞は死んでるわけで、パンパン聞こえます、通勤時間内では足りなかったりするわけです。得に今はNHKに通ってるわけですが、ここだと1時間もかかりません。
そう言う時はどうするかと言うと、ファミレスで覚えるのです。
私はですね・・・、自分の部屋では絶対にこう言う事はできないのです。意志が弱く、すぐ現実逃避をしてしまう私は自分の部屋では全く集中できません。遊んでしまう道具がいっぱいありますからねぇ。パソコン、カメラ、ゲーム、漫画にギター、etc・・・。自分の部屋で仕事をするしかない脚本家や漫画家の人をほんとうに尊敬します。
ファミレスはなかなかいいです。ドリンクバーでいろんな飲み物がありますし、深夜だとかなり集中できます。ファミレス側にとってはドリンクバーで長時間ねばる迷惑な客でしょうけど。

ただですね、この深夜のファミレスにも私の集中力を乱す難敵がいるのです。
カップルの痴話喧嘩です。別れ話なんかされた時には・・・もうダメです!視線は一応台本の上なのですが、もう耳が!セリフどころじゃありません。
私はこの深夜のファミレスでけっこう別れて行くカップルを見送っています。

昨夜もですね、私のすぐ向こうの席にいたのです。
年の頃は二人とも大学生くらいですね、今風と言うよりは一昔前って感じのとても好感の持てるカップルでした。このカップルはちょっと他のカップルとは違ってましたね。二人とも斜め下45度を見つめたまま一言も口をきかないのです。それはそれは・・・ズッシーンっとしてピーンとした空気です。
私の側からは男の子の顔がよく見えたわけですが、つたってましたね、頬に・・・。
「どうした?何があった?オジサンに話してみろ」
などとしゃしゃり出たいわけですが、そんな事ができるはずもなく、刻々と時間が流れて行きます。一言の会話も無いまま、その内に女の子の方が千円札を一枚テーブルに置いて立ち上がりました。
この時の男の子のセリフが、
「多すぎるよ・・・」
バカですねーー!!ほんとに・・・。他に言わなきゃならない事がいくらでもあるでしょうに・・・。その男の子は女の子が去ってからもしばらく一人でジッと動かず座ったままでした。

とにかく、セリフを覚えると言うのはなかなか大変なわけです。
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意味の無い写真ですが、二人が去った後、私一人きりになった深夜のファミレスです。

そう言えば、ある漫画で忘れられない別れの情景があります。
「あしたのジョー」です。
カーロス・リベラ戦の後だったと思います。ジョーと乾物屋の紀ちゃんがデートすることになるんですね。それまで紀ちゃんはずーーっとジョーに思いを寄せていたわけです。でもボクシングへの熱い思いを語るジョーを見ていた紀ちゃんは
「わたし、ついていけそうにない・・・」
とバッサりとジョーを切り捨てるのです。それまで、ずーーっと長い間、紀ちゃんはジョーに惚れていたんですよ。それをいとも簡単にバッサリと切り捨てるのです。確か、紀ちゃんの次の登場はマンモス西との結婚式のはずです。
この紀ちゃんに私は妙に女性のリアリティーを感じてしまうのですが・・・いかがでしょう?

いや・・・いかがでしょうって・・・セリフ覚えなきゃ・・・。